不動産 愛知県の永遠のテーマ
辞める前日はげんなりして夕食ものどを通らない状態。
その様子をみて家族で話し合い、退職を決めた。
我慢しろという友人もいたが、最後は「辞めたら」といってくれた。
第3の例。
これは今春大学を卒業し就職した男性の母親の話である。
就職活動で山ほど面接を受けて、大手企業に入社できたが、帰宅は午後2時から午前一時。
睡眠不足のまま車を運転するので、事故を起こさないようにと、毎日仏壇に手を合わせる。
「辞めたい」と愚痴る息子を夫婦で引き留めている。
「2、3ヵ月で辞めたら次の仕事がない。
我慢して1年は続けてほしい」というのが、その理由。
サラリーマンの夫は、前の会社を短期間で辞めて転職してきた人は何でもすぐ投げ出してしまう人に思えるという。
母親は「親としてどうしたらいいのか分からない」と悩んでいる。
以上、最近の労働時間の状況をみてきた。
それが前述の雇用・賃金の管理と一体ですすめられている点に注意すべきである。
つまり、人件費の削減と効率化という「大目標」があって、その目標を「雇用」・「賃金」・「労働時間」の各領域から統一的に追求する、ということだ。
つぎの日本経団連の記述が、そのことをよく示している。
「企業の総人件費は、賃金・雇用・労働時間が要素であって、人件費効率化のアプローチはこの3つの要素を対象に取り組むべきであろう。
すなわち第一に、賃金組み合わせ、最小の人件費コストで最大の経営効率を実現するかという問題となる」。
要するに財界・企業は、労働力の各段に安くて効率的な利用を、「国際競争力強章化」の名のもとに追い求めている。
かれらの意識から、労働力が労働者という人間と一体であること序など捨象され、このことが労働者の過労死などさまざまな健康破壊を増大させている。
このような状況のエスカレートが、近年、とみに労働者の不安・ストレスを増幅させ、精神障害などさまざまな健康破壊を増大させている。
過労死・過労自殺は、その極みといえる。
むろん悪条件が揃えば、すべての労働者の健康が破壊される、過労死・過労自殺にみまわれるということではない。
悪条件が揃えば、そのような犠牲者が増加するのは必然的であるが、それは個々の労働者の体力や家庭状況など種々の特殊事情偶然性を媒介にあらわれる。
こういう科学的な理解が過労死など健康破壊を判断・認定するさいに、決定的に重要である。
犠牲者が「個人責任」にされることが多いが、その誤りの最大の理由は、財源問題を別にすれば、科学的かつ冷静に右の観点が貫かれないからであろう。
みんな同じように働いていたのだから、彼の死の責任は彼自身にあるこういう皮相的な見方が経営者だけでなく労働者のあいだでもみられる。
改められなくてはならない大事な点である。
とにかくいま、過労死・過労自殺・その他各種の健康破壊が急激に増加している。
厚生労働省の調査によると、「長時間労働などが原因の脳・心臓疾患でなくなる「過労死」で労災に認定された件数が、2002年度はこれまでで最も多い160件に上った。
死亡には至らなかったものの後遺症が発生したケースも含めると317件になる」という。
さらに、「うつ病など精神障害の認定も100件に達し、過去最多を記録した」ということだ。
02年の過労死認定件数が前年比4割増になっているのは認定基準変更の影響があるとしても、変更以前の95年以降、その件数が大幅に増大傾向にあることが明白である。
業種別にみると、トラックやタクシー運転手など運輸業が72件で最多である。
職種では管理職が71件で最も多い。
営業、システムエンジニアなど残業時間が長い職場が目立つ。
年代別では中高年が多く、50歳台が全体の4割以上の128件である。
40歳台の90件を加えると、全体の約7割を占める。
性別では男性が95%(301人)と圧倒的に多い。
一方、仕事が原因のうつ病や心的外傷後のストレス障害(PTSD)など精神障害の労災申請は前年度比で3割増(2141件)である。
認定は100件で4割増えた。
このうち過労自殺(未遂も含む)も21件増の43件でこれも過去最高である。
過労自殺はすべて男性だという。
いま一瞥したのは労災として公に認定された件数である。
認定されず実質的に過労死や過労自殺といえる犠牲者の数は、この数倍に上ろう。
前述のように、当事者(遺族)が家庭の特殊事情などの「自己責任」だと思い込み、過労死・過労自殺として表面化しないケースも少なくないだろう。
それでも、労災に認定された件数で急増していることが重大である。
これには実際に過労死・健康破壊を生む「3要因プラス間接要因」(はしがき参照)が拡大していることの結果であるが、同時に認定基準の緩和も少なからず作用している。
まず「疲労の蓄積の考え方」も改められた。
つまり、「恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。
このことから、発症との関連性において、業務に過重性を評価するにあたっては発症前の一定期間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする」こととなった。
具体的に「発症前の長期間」とは、「発症前おおむね6ヵ月をいう」とされ、なお、それより前の業務については、「疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり、付加的要因として考慮すること」とされている。
また過労自殺についても、99年9月の労働省(現・厚生労働省)の通達「精神障害に係る自殺の取り扱い」で「自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態での自殺は、労災補償の対象にする」と改められている。
自殺者の7割はうつ病だといわれる。
社会経済生産性本部のアンケート調査(上場282社を対象)によると、「最近3年間に心の病が増加傾向にある」という回答が約半数であり、逆に「減少傾向」は3・5%とわずかである。
「N新聞」(03年8月4日付)が「リストラを進める企業が、うつ病になった社員の仕事を軽減するといった余裕をなくしつつある」と上場企業の産業医の指摘を紹介している。
深刻な事態である。
関連する実例として、大手コンピューターメーカー勤務の40歳台の男性は、うつ病で1年間休んで復職した直後、プログラミングの試験課題を渡されたが、翌月上司から「要求水準に達していない」として早期退職勧奨を受けた、という。
その彼は「この世界は変化が激しい。
復職後いきなり試験では無理だ」と訴えている。
教育現場でも、うつ病など精神障害は深刻で、Y病院(東京・千代田区)の精神神経科のN医師は、「まじめな教師が健全さをどこかであきらめざるを得ないような状況が学校現場で起きている」(N新聞」03年8月16日付)と警鐘を鳴らす。
同医師によると、精神神経科外来を受診する教師が1998年ごろから急増したという。
「受診者の7割は抑うつ状態と診断された。
内訳は2割が本格的な狭義のうつ病で、残りの5割は、主に職場内での不快な出来事によるストレスから直接引き起こされる「反応性うつ病」だ。
今の学校現場で健康を保っていこうとしたら、教職を全うすることにどこかで手を抜かなければ無理。
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